3分で教えます! vol.24 「ケインズ経済学」


経済学というと必ず出てくるキーワードのひとつに、「ケインズ経済学」というものがあります。
経済は生き物で時々刻々と時代に合わせ、その姿を変えていっていますが、今の経済学の基礎を構築していると言われているのが、
イギリスの経済学者、ジョン・メイナード・ケインズが提唱した説なのです。
経済学といわれると難しいイメージを抱きますが、できるだけシンプルに簡単に書いてみようと思います。

ケインズ以前の経済学


ケインズが経済学者として世界に影響を与えた説を発表したのが1936年の「雇用・利子および貨幣の一般理論」と言われています。
世界的には第2次世界大戦の勃発前の時期あたりですね。
それ以前の経済学というと「市場経済」といわれていたもので、
端的にいうと、モノの値段や需要は勝手に決まるので市場自体に任せておけばいい、という理論です。
人々がモノを欲する需要とモノを提供する供給というものは一定周期でサイクルを描き、勝手にバランスをとる、という内容です。アダム・スミスの「神の見えざる手」が有名で、一定周期を描くグラフがまるで第3者の意図によってコントロールされている様を表しています。

しかしこの理論は破綻を迎えます。

産業革命などを経て、労働者に格差が生まれ劣悪な環境が生じ、貧富の差が激しくなりバランスが取れなくなっていったのです。

ケインズ経済学の登場

(ジョン・メイナード・ケインズ。参照:wikipedia)
そこで登場してきたのが、ケインズ経済学。
この時代、世の中は世界大恐慌に襲われていて、アメリカでは失業率はなんと24.9%!。およそ4人に一人が職に就けないという今では信じられない数字です。
(ちなみに2019年現在の日本の完全失業率は2.5%前後)。

今までの考え方では労働市場(いわゆる賃金)も市場経済によって勝手に決まるので、働きたい人が増えるにつれ、賃金も下がりだしある一定で均衡し、過不足無く需要と供給が満たされる、というのが常識でしたが、そうはならなかったのです。
そこでケインズが仮説を立てたのが、下方硬直性というキーワードで、賃金・物価などは上昇はしやすいが、下降はしにくい、という考え方です。
確かに現代においても物価や賃金は下がることはありませんよね。各都道府県別の最低賃金などは上昇の一途をたどっています。

さて、時代を1930年代に戻します。

企業は世界の経済の先行きが不透明なので投資や生産を控えます。当然人は不要になりますから雇用も伸びません。加えて上記の硬直性もからんでなかなか人は職に就けなくなります。となると家庭での消費を控えます。そうすれば企業への注文も減ります。その結果・・・、というように負のスパイラルが止まらなくなっていくのです。

当時を風刺した映画でのひとコマにこんなセリフがあります。

「エンパイアステートビルの下を歩くときは人が降ってくるので傘をさしておかないといけない」

当時竣工し、世界一の高さを誇ったニューヨークのビルから飛び降りる人が後を絶たなかった世相を現した言葉ですね。


(参照:wikipedia)

時代の前置きが長くなりましたが、ケインズ経済学はこの状態に対して「有効需要の創出」を提唱します。
具体的に言うと、国が公共事業などを通して財政支出を行い、経済に介入すべき、としたのです。
需要を国という第三者が生み出し、市場に投入することで供給とのバランスをとるべきだ、ということです。

それまでは経済においての国家は「小さな国家」や「夜警国家」と表現されるように最低限の行政を行っていればいい、というスタンスでしたが、
ここにきて積極的に介入すべき、という存在になったのです。

今日では経済・景気問題は国家(政府)の主要な課題となっていて、不景気なのは国の政策が悪いから、とまで断罪されてしまう向きもあります。
そんな今となっては当たり前の概念を提唱し、定着させたのがケインズ経済学の一面にあたるのです。

そんなケインズの考え方ですが、やはり万能ではありません。
大恐慌には有効に動いたかもしれませんが、そのツケとして国家の負債(赤字)が雪だるま式に増えてしまうという結果を生みます。

今現在の認識では、
・好況期・・・勝手にモノとヒトが動くので、市場の流れに任せておけばよい(市場経済)
・不況期・・・政府が介入して需要と供給のバランスを保つべき(ケインズ経済学)

というハイブリッドな考え方をもっておいたほうよい、ということになっているようです。

いかがでしたか?


今回は経済学、という大きなテーマを扱ってみました。
経済学と一言で言っても、グローバル化が進んでいる現在では通貨の価値や輸入出、国際情勢、また高齢化問題。購買の流れとして心理学なども加味されていたりと突き詰めるときりがないほど深く広い分野となっています。
ただ、あれこれと考えすぎると本質を見失うのも経済学の特徴。
まずは身近な例に置き換えて考えてみると興味が沸くかもしれませんよ。

これからも色々なテーマを取り上げていきます。リクエストなどあればページ下部のコメントから送ってください!

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