ここ近年企業では人材が不足気味となっており、有効求人倍率が上昇してきています。その中身を見てみると、女性の生き方が変わってきたことによりいわゆる「M字カーブ」が崩れてきているのが見えてきます。今回は求人倍率とM字カーブの関連を説明します。
■ 目次 ■
M字カーブとは?
女性の就業率の特徴を表したグラフの形状がアルファベットのMの形になっていることからそう呼ばれています。
下図をご覧ください。
(参照:内閣府男女共同参画局)
女性の就業状況を右軸に年齢、縦軸に就業率で表したものですが、特徴としてどのラインも25歳前後で下がり30歳半ばであがりだしているのがわかると思います。そして50歳を過ぎたあたりから下降を始める。
この曲線がアルファベットのMの形になっているため
続けて各ラインを凡例とともに見てみると、生まれが後年になるほど25歳前後での落ち込みの角度が浅くなっています。言い換えれば、「最近の若い女性は就業率が高い」ということです。
これには近年の晩婚化や出生率の低下の影響、女性の社会進出が当たり前になってきている影響で「結婚して出産して専業主婦」というイメージが崩れ、
確かに私の周りでも出産してから数年後に職場に復帰するという選択をする女性が増えてきているように感じます。
企業としても新規で求人し教育するよりも即戦力として戻ってきてもらえるのであれば助かる、ということで産休・育休の福利厚生が充実してきている背景があります。
そのような時勢から、近年M字カーブは崩れてきている、とも言われています。
求人倍率との関係
上記のM字カーブは女性限定の話ですが、今度は全体の話になります。
世の中の求人状況を表した指標として「有効求人倍率」というのがあります。
これは公共職業安定所(ハローワーク)でのデータをもとにしたもので、厚生労働省が毎月データをオープンにしているものです。
中身としては、企業が出している求人数を求職者数で割ったものになります。
つまりは結果が1を下回るようなら「求職者数のほうが多い = 人が足りている。いわゆる買い手市場になっている」、
結果が1を上回るようなら「求人数のほうが多い = 人が足りていない。いわゆる売り手市場になっている」
というように判断できます。
仮に有効求人倍率が3ということであれば、一人の求職者に対して3つの求人案件がある、というように解釈できます。
さて、近年の求人倍率ですが2018年6月度のデータでは、倍率が1.6倍となっており、「売り手市場」となっていることがわかります。下のグラフからもわかるようにここ数年は右肩上がりでこの動きはしばらく続くと言われています。
(参照:厚生労働省)
M字カーブと事務職の関係
右肩上がりを続けている求人倍率ですが、中身を見てみると前述のM字カーブの変化と密接に関わっていることが見えてきます。
厚生労働省は全体の倍率の報告とセットで職業別の集計も発表していて、その中身ではかなりばらつきが見えます。
たとえば、
・医療や介護などは倍率が3に近くなっている
→近年の高齢化から想像がつきますね。
・建築関係の倍率が4倍を超えている
→平時高い分野ではありますが、東京オリンピックなどの影響を受けているのかもしれません。
・接客・給士のサービスも4倍近くなっている
→飲食やコンビニなどでもよく人手不足を聞きます。外国人留学生などが増えていますが、まだまだ不足感が高いことが伺える数字ですね。
というように世相と照らし合わせてみることができる指標になっています。
一方倍率が1を大きく下回っている代表的な職業が一般事務職になります。
6月度の数字では0.3ということで、求職者3人に対して募集が1つしかないようなら状況です。
この数字にM字カーブの変化が関わってきています。
昔から安定した企業の事務職は長く続けられると女性に人気ではありましたが、結婚後・育児後も続けたいと希望する女性が増えたことでさらに倍率が低くなっていると推察されます。
育休・産休を埋めるための派遣・パートの事務は求人が多いと聞きますが、正社員の求人は(特に女性の)ライフスタイル・人生設計の変化の遷移とともに(低く)変わってきているようです。
いかがでしたか?
今回はM字カーブと求人倍率の2つのテーマを取り上げてみました。今回のケースは日ごろ感じている世相とデータがかなりマッチしていて、個人的に納得感があり興味深いものだと感じたケースのひとつです。伝えたいことをデータで裏付けできると気持ちのいいものですね。