発生から3か月以上経過しても一向に収まる気配のない新型コロナウィルス。
致死率はそれほど高くないという情報がありますが、日本では実際の感染者数が測れていないことから有効な拡大を防ぐ手立てを模索している、そんな感じも受けますが、何より不安を駆り立てているのは治療法・特効薬が開発・公表されていないことにありそうです。
■ 目次 ■
人体実験に歴史あり
おそらく時事を意識してのことだと思うのですが、近所の書店に平積みされていた本が今回のテーマです。
タイトルは「世にも奇妙な人体実験の歴史」。
コンビニの本棚コーナーにある写真入りのムック本のようなタイトルですが、しっかりとした文庫本で訳者もしっかりとついた洋書です。400P越えですが、意外と挿絵も写真もなくびっしりと人体実験の歴史が書き連ねてあります。
各章の見出しもなかなか刺激的で、麻酔や寄生虫や血液や漂流など各テーマに対して命がけで人体実験を行ってきた歴史が満載です。
人体実験はまず自分自身で
今より倫理観が厳格でなかった18~20世紀中ごろまでが主な時代なのですが、当時は疑問に思ったり、好奇心が湧くとまず自分で試してみたいと思う科学者が多かったようです。(一部は奴隷や死刑囚など)
「漂流したときにどれくらい海水での水分補助が可能か」という研究をおこなっていた学者は
-自らボートに乗り込み漂流し、65日間のサバイバル生活を送ったり、
-感染経路を調べるために感染者と1つのベッドで寝食をともにしたり、
-麻酔効果を検証するために笑気ガスを自ら吸い込んで意識を失いかけたり
と、今の常識では考えられない事例が続きますが、当時としては当たり前で命がけで研究と向き合っていたという面にも気づかされ、行動力と使命感に驚かされる面も多々あったり。
また「食物」については歴史が深く、今までの人類がどのようなものを食材として口にし、どのような感想を残してきたのか、ちょっとした食レポのような形で綴られていて興味がひかれる内容になっています。
感想が
「焼いたオイルランプの芯」、
「汗だくの馬のにおいのよう」、
「ジャックと豆の木に出ていた大男が食べていた粥を連想させる味」
など独特過ぎてよくわからない表現が多いですが・・・。
またゲテモノの一種としてコウモリを食する国もある、という一文も見られ偶然とは言えちょっと複雑な気分にも。(この本自体は2016年に刊行)
ユーモアに溢れた文体に救われる
人体実験というと暗い響き、大きな声では言えないブラックな雰囲気を感じさせるテーマですが、この本はそんなテーマをとにかくユーモアたっぷりに扱っています。特に過去に実験を行った科学者たちに対しての愛情を感じさせる表記が多く、ある科学者の人物評を一通り行った最後に、
とか、
ピロリ菌を自ら採取した医師の体調に異変が生じた場面では、
洋書のユーモアは伝わりにくいイメージを持っていましたが、訳者が優秀なのか違和感なく楽しめる表現になっている点が読みやすいとも思います。
いかがでしたか?
本書にも記されていますが人体実験の歴史には、表舞台に名を残し名誉を受ける人だけはなくそこに至るまで数多くの犠牲と情熱が費やされている。そんな熱いテーマを感じることが出来る一冊です。雑学として興味があるかたは是非。