みなさんの日常生活に密着するモノの「価格」。今回はその価格について取り上げてみます。
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価格の定義
価格とはその商品・サービスの価値を数字として表したものになります。その商品・サービスを入手・享受するためには決められた価格分のお金を支払い、売買が成立する仕組みが大前提となっています。
いまさらながらの当たり前のことですね。
では、この価格がどのように決められているかを考えてみます。
一般的には、商品の材料があり、それを加工する費用があり、包装し物流する費用がかかります。それらの工程にかかった人件費もかかってきますし、商品を認知させるために宣伝をする必要もあります。
そしてそれらの諸経費に加え、販売者の取り分である利益を乗せてようやく最終的な販売価格が決まってきます。
では、商品の価格というものは一律に上記の式によって決まるものか、というとそうではありません。
様々な意図や戦略によって価格は決まっているのです。
内部参照価格という見えざる敵
まずは日常生活で一番価格と向き合う場面が多い日用品を例に考えてみます。スーパーマーケットを思い浮かべてください。
スーパーマーケットなど競合が多く、認知の高い商品群において無視できないのが、
これは消費者が抱いている感覚値で、「この商品ならこれくらいが妥当」という感覚のことです。
みなさん、意識せずとも持っていますよね?
食パン5枚切りならこれくらいだろう、たまご1パックならこれくらいだろう、というもので、
この感覚値を下回るようなら「お買い得」と感じるし、高いようなら「今は買わない」という判断が働きます。
スーパーなど薄利多売で利用頻度の高い業種での価格設定にはこの感覚をコントロールすることが必要になってきます。
来客数を増やすための特売は必要ですが、単純に価格を下げるだけでなく「いかに顧客の内部参照価格を下げないようにするか」は重要なテーマとなります。
内部参照価格を下げることなく、販売単価を下げ、プロモーションとして有効とされている手法には以下のようなものがあります。
・・・”本日冷凍食品2割引!” などのプロモーションが代表的な例で、この売り出し方だと顧客のお得感を刺激し購買意欲を煽ることが出来、個々の内部参照価格は下がりにくい施策となります。
・・・レシート単位での一括割り引きも個々の価格を崩すことがありません。
・・・”このコーナー、2個で500円” というような売り出し方も有用ですね。1つずつの単価を意識することなく購入に至りやすい売り出し方となります。
・・・期間限定で商品自体の容量を増量するキャンペーンです。商品価格を据え置きにした場合、内部参照価格自体は変わらないのでキャンペーン終了後に影響を受けにくいタイプになります。
一方で、参照価格を下げてしまうが訴求効果が高く短期的な売り上げをあげるための価格設定もあります。
・・・Every Day Low Price。通常より安い価格で中長期的に商品の価格を下げることにより、恒常的にお得感を演出でき競合との差別化などが行える価格戦略ですが、消費者がその価格に馴れてしまうため値下げをやめる事が難しくなってしまう可能性があります。
・・・来客数増のためだけに利益を度外視した価格を設定し、顧客にインパクトを与える方法で、商品と価格によっては話題性も高いのですが、スーパーそのものに安売り感が出すぎてしまい計算に基づいた価格設定が行えなくなる危険もあります。
このほかにもクーポンでの割引やポイント割引、端数価格表示(200円ではなく198円表記)など価格に対するアプローチは様々になります。
作られた「名声価格」
上記ではいわゆる「最寄品」について見て来ました。その対極にあるのが、「ぜいたく品」になります。
この「ぜいたく品」になると、価格設定の発想が異なってきます。
当然大前提にある、その商品の原価・諸経費を下回らない、というルールは必要ですが、プラス「ブランドイメージ」を乗せることが戦略となってきます。
そのブランドイメージを付加された価格のことを
顧客の参照価格を意識するのではなく、販売サイドで価値を決めリードしていくという構図になります。
品質・デザインに特徴を持たせ、顧客(主に富裕層)の所持欲求を満たすような価格設定をする。
この戦略には販売の方法も大きく関係してきます。
以前販売不振だったブティックがカゴ売りをやめ、POPを外し、値札を付けず、見える情報の露出を最低限に抑えて高級感を出した結果、来客層が変わり客単価が上昇、売上増へと繋がった、という事例をテレビで紹介していました。売る商品、ターゲットする層によってのアプローチの大切さがわかる事例かと思います。
また、作る側にもブランドイメージのコントロールが必要となります。
つい先日イギリスの有名ブランド「バーバリー」が42億円分の在庫を焼却処分すると発表しニュースとなっていたのをご存知でしょうか?
バーバリーほどのブランド力があれば、値下げなどをすることで売ることは可能だと考えるのですがそこは老舗のトップブランド。ブランド価格を下げないために安売りして在庫をさばくのではなく、損益を出してでも処分をするほうを選択したのです。処分となると1円にもならないうえに処分の費用まで掛かるのでキャッシュフローの観点から悪でしかないと思われがちですが、バーバリーは必要悪として経営判断をしたのでしょうね。名声価格を考える上で参考になる事例と思います。
似た考えに
いかがでしたか?
価格に関する様々を取り上げてみました。基本安いに越したことはありませんが、安すぎると物足りなかったり疑ってみたり。嗜好品ともなると人によって基準が千差万別となり、消費者心理は奥が深いと考えさせられます。