小ネタで息抜き。vol.6 「ロマンあるクソゲー。E.T」

ジャンル問わずの小ネタ・小話を紹介する記事です。

クソゲー歴代1位?

クソゲー。
表現は悪いですが、非常に出来の悪い、価格に見合わないゲームのことを指す言葉です。
一口に出来が悪い、と言っても内容は様々で、

・バグで止まってしまいゲームが続けられない
・内容が難解・不親切過ぎて進められない
・画像・画質が雑すぎて進行に支障が出る

などがよく挙げられる要因となっています。

そのほかアニメや映画などキャラもののゲームなのにまったくストーリーに沿っていない、原作を無視して期待外れだった、というようなものも一部あるようです。

このクソゲーといわれる基準は明確にあるわけではなく、あくまでユーザーの主観により変わります。
固い言葉で言うなれば、「市場が判断する」ということになります。

当然売り上げにも反映してきます。
ファミコンなどが普及し始めたときは情報が口コミ・情報誌くらいしかなく、また購買層もゲームのことをよくわかっていなかったのでタイトル・パッケージで売れたりしていたため、今ではクソゲーと言われているもののセールスが高い、ということもあったようですが、現在はユーザーの目が肥えて、その情報がネットで流れるため内容と売れ行きは厳密にリンクしているようです。

今回はゲーム黎明期に発売されたゲームで、伝説のクソゲーと言われているソフトを紹介します。
このゲームにはいろいろと歴史があり、なんと今ではスミソニアン博物館に収蔵されているようです。

E.T. The Extra-Terrestrial

現在でもクソゲーといえば名の上がるゲームの名前は

「E.T. The Extra-Terrestrial」

です。
あのスピルバーグ監督の映画、「E.T.」を題材にしたゲームで1983年にATARI社が開発・発売しています。
ハードはATARI2800というアメリカ発の機種で日本でも発売されましたが任天堂のファミコンと同時期ということもあって市場に浸透せず、一年ほどで撤退したようです。

ゲーム機というより、昔のパソコンに近いかもしれません。色や形状がMSXに似ていますね。

さて、そのE.T.ですが、映画のヒットに加え、発売時期がクリスマスということもありかなり期待のソフトとなっていて、結果として150万本を売り上げました。

しかし中身のほうは・・・。

ソフトの概要

まずはゲームパッケージ。

確かに見たことのあるE.Tです。特に違和感はありません。

そしてゲーム画面。

ファミコンが出始めた時期なので、今日のようにリアルな映像ではないことはわかりますが緑色のキャラクターがE.Tと思うかというと、ちょっと・・・、というレベルです。
また致命的なバグがあったり、そもそも動かない、という不良品もあったりしてなお評判を落としてしまっています。

E.Tはいくらユーザーの目が肥えていない当時でもその内容を酷評され、発売元のATARI社の評価は急降下、アメリカのゲーム市場に対する不信感を巻き起こした「アタリショック」の引き金になったとも言われています。
(当時アメリカではアーケードブームに便乗し、品質の低いゲームが大量に出回り市場が混乱していた。そこにこのE.Tが鳴り物入りで発売されたので、決定打となってしまったようです)

ソフト自体は500万本製作されており、それらのほとんどは在庫となってATARI社の経営を圧迫することに。
そしてそのソフト達は埋立地に不法投棄されてしまった、という都市伝説を生むことになったのでした。

なぜ?

なぜヒットの見込みのないソフトを売り出してしまったのか。

これには現在のIT業界でも馬鹿にはできない理由があって、一言で言うならば「納期を守るため」ということになります。
当時は半年くらいが標準の開発期間として見込まれていたのですが、E.T.の版権を取得するのに手間取ってしまい、その分開発期間が削られる事態に。
最終的には6週間という期間で設計・開発・テストを行わないといけない状況となってしまったのでした。

エンドが決まっていて、開発期間が削られ、考慮不足・不具合・品質不足が生じてしまう。

これは現在においても起こりうる現象ですね。

さて、このソフトが発売され35年近くが経過しているのですが、開発者が当時のことを振り返ってインタビューに応じています。
要約すると、「6週間で作り上げたことには満足している。ただ、ユーザーにはそんなことは関係ないのだろう」といった感じで、ムチャな条件の中、ほぼ一人で短時間で完成まで持っていた技術者の矜持・プライドといったものを感じさせます。いかにもアメリカ人ぽいと思います。

まだ話には続きがあります

そんな経緯でクソゲーの代名詞となってしまったE.T.が再び歴史の表舞台に出てきたのが、2014年。

なんとニューメキシコ州の埋立地を掘り起こしてみたら、当時投棄されたと思われるE.T.のカートリッジが出てきたのです!

この企画はプロジェクト化されていて、CS(たしかヒストリーチャンネル)でドキュメントが放送されているのを偶然私も見ました。
砂漠地帯の何もないところに人の行列が出来ていて、何事かと思ったら発掘に立ち会うために並んでいるのです。
ショベルカーを数台稼働させた発掘は難航を極め、日も暮れだしあきらめムードが漂いだしたときに「それ」は出てきました。

そう。見慣れたあのE.T.のカートリッジ。

都市伝説ではなく本当に埋められていたのだと参加者は歓声を上げ、歴史的瞬間だ、と盛り上がりドキュメントは終了していました。



そしてその後、E.T.は歴史的遺物として博物館に収められたのです。

クソゲーと評されてしまうゲームは数多くありますが、その中でもE.T.が異彩を放っている理由がわかっていただけましたでしょうか?

出来た経緯、
携わった人たち、
それを追い続けた人たち。

なんとも表現が難しいけどロマンのあるソフトなのです。


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