小ネタで息抜き。vol.5 「真っ向勝負のスローカーブ。星野伸之」

ジャンル問わずの小ネタ・小話を紹介する記事です。

プロ野球選手 星野伸之

今回はプロ野球界の往年の名選手である星野伸之を取り上げます。
星野は阪急ブレーブス→オリックス→阪神と球団を渡り歩き、通算176勝、2041奪三振と輝かしいキャリアを持つ名投手ですが、この経歴以上に彼のプレイスタイルは引退から20年近く経った今も野球界の中で異彩を放っています。

星野の代名詞は「遅いストレート」

星野を語るうえで外せないのが、130キロ前後のストレートと90キロ前後のスローカーブでしょう。
130キロのストレートといえば、現在では高校生の投手でも普通に投げている球速で甲子園に出ている投手は軒並み140キロから150キロのストレートを投げているのをよく目にします。
つまり、星野のストレートは球速だけで見ると高校生レベルと言ってしまっても過言ではありません。

それに加えてさらに遅いスローカーブ。
90キロ台といえばバッティングセンターでも遅い部類の球速で子供や野球経験のない人が打つボールが山なりに見える球速です。

星野はその2種類のボールを軸に(あとフォークと一時期スライダーも)強打者ぞろいのパ・リーグを中心にエース級として活躍し続けたのです。

きれいな投球フォーム

技巧派として代表的な選手である星野ですが、その名に恥じず投球フォームを美しく、優雅な印象を受けます。
下の画像が振りかぶって投げ込む前のポーズですが、ボールを握った手に注目。
野球をやっていた人とかはわかると思いますが、握った手の角度が普通ではありえない角度になっています。
今から投げる方向に対して真逆になっていて、おそらく対峙している打者から見えないように工夫されていると思われます。
また、キレのあるカーブを放るために手首の回転を使えるようにとも著書にはありました。
この時点で独特です。


そしてリリース直後の画像が下になります。

細い体全体をしなやかに使い、ダイナミックな動きとなっています。
普通の投手だとストレートと変化球を投げる時、それぞれに動きに癖が出て打者の攻略のヒントになったりするのですが、
星野の場合、まったく違いがわからなかったというコメントも残っていたような。

投球フォームひとつとってもプロの技術が感じられる、個人的に好きな投球フォームです。

2041奪三振

150キロものストレートを常時放り込む投手でもプロの打者から三振を取ることは容易ではありません。
1試合あたり10個取れれば一流と言えるのではないでしょうか?
それだけ取るのが難しい三振を技術と駆け引きだけで2000個以上も記録した星野の記録は他とは比較できない数字と思います。
また「無事これ名馬」という言葉を体現した選手で引退前の2,3年を除けばデビューから15年近く大きな故障なくコンスタントに活躍を続けている点も特徴です。
投球フォームからも伺える体の柔らかさなどが関係していそうですね。

なぜ打てない?

当然なぜそれほど結果を残せたのか、と素人目線では疑問に思います。当時の映像を動画で見てみても球自体は遅く見えます。
当たっても痛くなさそうだし、きれいなフォームなので打ちやすそうです。

星野自身が著書で語っている話では体の調子が良くて球速が出てしまうときはよく打たれて、調子がいまいちと感じ慎重に丁寧に投げたときは不思議と結果が出た、というようなことを言っていました。
また開き直ってど真ん中に放り込んだ時も結果が出たようです。
ただ、当時トップクラスのスラッガーだった清原なども星野のストレートが一番打ちにくかった、と言っていたように球の回転やキレ、球質などなにか特殊なものがあったのでしょうね。

また技巧派・知能派らしく常に「打ち取る球から逆算して投げる球を決めていた」とも言っています。
目先の一球に力を注ぐのではなく、ストーリーを描いてそのためのピースを埋めていく、といった感じでしょうか。
ちょっと常人には想像ができない領域です。

プロ入りの経緯

プロ入りの経緯も興味深いです。
決して突出した成績を残していたわけではないようですが、プロのスカウトには光るものがあったようで「打ちにくそうな球を投げる」という評価に加え、「いいふくらはぎをしている」といった点から評価されたようです。
「150キロを投げる」「高校生離れした飛距離」などのエピソードなく期待上位ではないドラフトの5位で入った選手が名選手になる点が面白く、奥の深い世界だなと感じさせられます。

有名エピソード

星野を語るうえで外せないエピソードがあります。
星野が投じた90キロ台のスローカーブを捕手の中嶋があろうことか素手でキャッチ。これには星野も苦笑いしたそうですが、
いくら技巧派とはいえプロの一軍の投手である自分の球を素手で取られプライドが傷つけられたとも思います。
ただ逆にその球でも結果を残している星野の凄味というようなものを感じさせるエピソードでもあります。

実際に見てみましょう

そんな星野が120キロ前後の球速で打者をきりきり舞いにさせている動画がyoutubeにありました。


完全にタイミングを狂わされてるのがあったり、振り遅れたり(!)、手も出せず見逃したり。
空振りした打者が揃って憮然とした表情をしているように見えて面白いです。
球速表示が間違えているように見えてしまいますね。

柔よく剛を制す。

蝶のように舞い、蜂のように差す。

そんな言葉がぴったりなプロ野球選手です。

また星野自身の著書もあります。
プロでどうやって生き残るか、目の前の打者をどう料理するか、など投手心理を中心に書かれていて非常に興味深い一冊です。
興味を持った方はぜひ読んでみてください。



返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です